乳酸(ラクテート; Lactate)とは、組織への酸素供給が不十分な時に上昇するグルコースの代謝産物です。正常値は1〜1.5 mmol/Lですが、ショックや血流低下といった組織への酸素供給が減少すると、2 mmol/Lを超えることが少なくありません。特に、4 mmol/L(36mg/dL)を超えると、死亡率が上昇することが分かっています。
例えば、循環不全患者を対象としたある研究では、乳酸値が2mmol/L未満の場合生存率75%ですが、4mmol/L以上で生存率25%とされています。また、敗血症では6mmol/L以上で24時間以内に約10%が死亡しています。
乳酸値が上昇する疾患としては、循環器疾患による循環不全、敗血症、腸管・四肢虚血、低酸素血症などがあります。いずれも上昇と死亡率は相関します。上昇していた場合、「何か変なことが起きている」と思った方がいいです。また、経時的に測定することで治療がうまくいっているのかを評価することが出来ます。
ただ、動脈を毎回刺すのは現実的ではありません。おすすめなのは、静脈血ガスです。動脈血と静脈血で乳酸値はおおむね一致することが分かっています。採血の際に血ガスも一緒に測っておきましょう。
最後にコストの話です。動脈血採取は50点ですが、これが「血液採取料(静脈)35点」に置き換わり、レセプトに静脈血を使ったことのコメントが必要になるようです。
重症度の早期把握・経時評価に役立つ乳酸値です。積極的に使ってください。
→紋扼性なら手術が必要だが、癒着性だったら保存で行けることが多い。乳酸値が上昇していたら紋扼性(虚血になっている)と予想される。早急に外科医がいる施設に転送が必要。一方で、上昇していなければ、超緊急ではなさそうと判断が可能。
→乳酸値が5だったら、かなり重症。ひとまず酢酸リンゲル1Lは入れましょう。乳酸値が1.0とかだったら重症ではない、または発症早期だと判断できる。
→乳酸値を経時的に測定。5だったのが、3に下がってきていたら治療は成功している。逆に上昇していたら、輸液が足りないまたは何か見逃しているかも。抗生剤投与が適切かもチェック。
→乳酸値を測定。5.0と有意な上昇。自信を持って(?)、技師さんをコール。結果的に、NOMI(非閉塞性腸管虚血:non-occlusive mesenteric ischemia)だった。夜間人を集めるのは躊躇しますよね。Over triageやUnder triageになりがちです。ただ、乳酸値が上がっていたら絶対におかしいと確信を持てると思います。
→Vガス測定。K 7.0で高カリウム血症が判明。すぐにカルチコールiv、メイロンiv、ラシックスiv、GI療法を開始した。Vガスなら2〜3分で結果が出ます。高カリウム血症は時間との戦いなので、電解質を早急に知りたい時に有用です。