挿管するときのコツ

麻酔科研修を回って自信をつけても、手術室以外でいざ挿管するぞとなるとできないことってありますよね。一般的に言って、手術室>ICU>病棟>ERの順に難しくなる気がします。これはセッティングや患者の状態にもよると思います。

すぐできる工夫としては枕です。俗にいうスニッフィングポジションをしっかりとるため、枕は高くしましょう。5cmくらいの円座と、5cmくらいの平たい枕の二段構えがおススメです。高すぎるときはすぐに低くできるからです。患者さんの枕ではなく、挿管用の枕を使うほうがいいですよ。

また、挿管チューブはホッケースティック状に曲げておくことをお勧めします。声門が見えていても、チューブの先が声門に向かわないという状況を回避できます。

ホッケースティック状の挿管チューブ

図 上:超ホッケースティック状、下:そこそこホッケースティック状

スタイレットはできれば柔らかめのやつをおススメします。硬いと声門周囲の組織を損傷しうるからです。思いっきり力を入れて曲げるやつは個人的には好きではないのですが、結構色んな病院でありますよね。頑丈だから壊れないんですよね。エコ!?

喉頭鏡はビデオ喉頭鏡にしましょう。おすすめはマックグラスです。若い先生はこれが標準でしょうが。今時クラシックな喉頭鏡はあり得ないと思います。

喉頭鏡のブレードを少し入れたら、上唇が巻き込まれてないかチェックしましょう。巻き込みそうだったら、ブレードを入れきるまで介助者に唇を頭側に引っ張ってもらいましょう。喉頭鏡の位置が決まったら離してもらえればいいです。血だらけになるのを回避できます。ちなみに、喉頭鏡の先が喉頭蓋谷に来た時が、「位置が決まった」と考えます。

喉頭鏡の位置は決まったが声門が見えない時ってありますよね。声門の下端しか見えないとか。そういう時は自分の右手で甲状軟骨を圧迫してみましょう。いわゆるBURPというやつですね(Back, Upward, Right, Pushでしたっけ?)。BURPで声門が見えたら一回手を放して、介助者の手を掴み(これがポイント)、適切な場所に介助者の手を誘導します。そしてそこをキープしてもらい、チューブを受け取ります。これは本に載っていませんが、私はよくやります。決して看護師さんの手を握りたいからではありません。

挿管チューブの先端を声門の奥に入れたら、スタイレットを抜いてもらいつつチューブを進めます。抜いてもらいつつ進めるというが最大のポイントです。

よく背筋をまっすぐ伸ばして挿管するなんて指導があります。口の中を覗き込んでいるのは初心者の証だなんて言う人もいます。ただ、年取って分かってきたのですが、老眼が始まると近くが見えなくなるんですよね。腰も曲がらないですし。だからベテランは自然と姿勢を良くして挿管するんじゃないかと最近思ってきました。自由にやればいいと思います。

病棟で挿管するときは頭もとにベッド柵がついていることがありますが、これは当然ながら外した方がいいですね。

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