詳しくは成書をご覧ください。私が勉強したのは、「中心静脈・動脈穿刺 (LiSAコレクション)」や「必ず上手くなる!中心静脈穿刺―部位別穿刺法のコツと合併症回避のポイント」などです。本文では網羅的な知識ではなく、教科書に載っていない雑多なコツやちょっとした工夫を書きたいと思います。
挿管と同じく、CVも手術室よりも病棟の方がずっと難しいです。病棟でCVを挿入するような人はカラカラに乾いていることが多いですし、安静が保てないことも多いです。
消毒をする前に穿刺部位のプレスキャンをしておくことをお勧めします。虚脱が著しければ、まずは乳酸リンゲルなどの細胞外液を500mlほど落としてから臨んだ方がいいです。
安静が保てない人では、そもそも入れる必要があるのか考えましょう。そういう人では時間をかけて挿入しても、あっという間に抜去されることがあります。抜去できるくらい元気ということですね。
枕は外しておきましょう。頭が上がって首が曲がっているとワーキングスペースが狭くやりにくい印象です。
肩枕は必須ではないと思います。首を進展させすぎると静脈が虚脱しがちです。
また、胸に脂肪が多い人ではテープで脂肪を尾側に引っ張ってワーキングスペースを確保しましょう。
静脈が虚脱している患者さんでは足を挙げておきましょう。布団を何枚も重ねて足の血流を上半身に持っていくといいです。本当はヘッドダウンの体位が一番いいのですが、病棟のベッドではそんな機能はないと思います。ただ、心不全の人は足を上げるとさらに苦しくなりますのでやらないほうがいいかも。
エコーのPresetをVascularにしておきましょう。時々PresetやDepthを調整しないで臨まれている方もいますが、一番見やすい状態を追及することをお勧めします。また、針の運針はDNTP法がお勧めですよ。
局所麻酔薬も生食もどちらも透明な液体ですから注意しましょう。最後のフラッシュの時に局麻をショットするなんてことは避けたいものです。プレフィルドのシリンジを使ったり、色付きシリンジを使ったり、マイルールを設ける(例えば、「局麻は10ccシリンジ」など)ことで予防できます。
消毒液は使ったらすぐにごみ箱に捨てたほうがいいですよ。暗い場所でやっていると生食なのか消毒なのか分からなくなったりします。
また、生食をあらかじめ2ccほど引いたシリンジで穿刺する方法もありますが、これだと血液の色が明るくなり、VかAか分からなくなると言われています。個人的には何も入ってないシリンジで穿刺するのが好きです。
ちょっとお遊びなのですが、穿刺後に血管がAかVかを判断する方法があります。穿刺針の外筒を根元まで入れた後に、エクステンションチューブをつけてシリンジで血液を逆流させます。その後シリンジを外すのですが、Aに入っていたら“Aライン”になるので、血液が噴き出すはずです。一方、Vだと自然に下がっていくはずです。やっている人は見たことがないのですが、こんなやり方もありますよ。
カテの固定ですが、外頸静脈に引っ掛けないように注意しましょう。結構血が止まらなくて後から困ります。
最後に抜去するときのポイントですが、空気塞栓を生じさせないことが大事です。そのため、必ず寝かしてやりましょう。坐位で抜かないようにしたほうがいいですよ。
私は息を吸って止めた状態で抜去しています。
さらにテガダームのような空気を通さないフィルムを針穴に貼った後に、俵にしたガーゼで圧迫固定しています。普通のテープだと空気を通しうるからです。
空気塞栓はブラッドアクセスやシースなどの太いCVで特に生じうるとされています。長く入っていると瘻孔化するんですよね。ブラッドアクセスを坐位で抜いて死亡したケースをニュースで見たことがありましたし、これは本当に気をつけた方がいいですよ。
色々と書いてしまいましたが、CV挿入って楽しい手技ですよね。経験を積んで上手くなっていくのを実感してください。