3 入局しないで学位を取得するには

下記の文章をざっくりまとめると

このホームページは、入局しそびれたけど専門医の資格は取れそうで、学位も気になっている若手の臨床医向けです。つまり、昔の私のような方々ですね。臨床講座に入局している方は、そのままそこで学位を取るのが自然ですから、ここではその話はしません。また、MPHについてはあまり詳しくないので、私が取得したPhDについてお話ししますね。私は母校の薬理学講座で学位を取得しました。このページでは、入局せずに臨床医が学位を取得する方法について、私の経験や注意点をお伝えしたいと思います。

まず、経済的に困らないことが大事です。特にご家族がいる方には、霞を食べて生活するのはおすすめできません。そのため、大学院に入る前に専門医資格を取得して、良いバイト先を確保することが必要です。

私は、大学院を卒業して学位を取る方法()をお勧めします。私自身もこの方法で学位を取得しました。最近は、論文博士()は非常に難しいと聞きます。

旧帝大系の大学院では、卒業要件が厳しいところが多いと聞きます。例えば、英語論文を二本書くとか、それを一定年数内に達成する必要があるとか。それをクリアできずに退学する人もいるようです。一方で、日本語で学内誌でも大丈夫なところもあるそうです。医学博士には変わりないので、入学する前によく調べておくと良いでしょう。

基礎系講座がおすすめです。臨床系講座は入局が必須ですが、基礎系講座は入局しなくても学位を取得できる場合があります。ただし、学位をきちんと出している実績のある講座を選ぶことが重要です。先輩医師から、中には院生の学位取得に積極的でない教授もいると教えられました。

母校で学位を取ると、いろいろと優遇されることが多いです。例えば、顕微鏡などの高額機器は共用が多いと思いますが、母校だと他の講座にも知り合いがいて、話がスムーズに進むことがあります。また、母校だと教授のことを事前に知っているので、講座選びも安心です。ちなみに、私の指導教官は素晴らしい方でした。実験は所属講座だけで行うものではなく、他の講座に意見を聞いたり、機械を借りたりすることも多く、ネットワークが必要です。そういう時も母校だと懐かしい先生に会えて、楽しい時間を過ごせます。

不夜城のように常に泊まり込む講座は避けた方が良いです。実験は細胞のサイクルに合わせて行う必要があり、深夜に実験することもありますが、常に泊まり込みが必要な講座は、家庭を持つ臨床医には厳しいでしょう。そのような講座もあるので、注意が必要です。

教授以外にもMDがいる講座を選ぶと、話がスムーズに進むことが多いです。現在の日本の基礎系大学院では、教授だけがMDで他は全てPhDという場合も多く、自分以外が全員PhDだと少し苦労するかもしれません。

佐々木倫子さんの『動物のお医者さん』にも書かれていましたが、退官間際の教授の講座を選ぶといいことがあるかもしれません。いわゆる「学位バーゲンセール」が行われることがあるからと書いてありました。ただし、自分が在学中に退官されてしまうと、自分の学位が不安定になるので、その点は避けた方が良いかもしれません。

私は麻酔と救急の専門医資格を持っていたので、アルバイトで生活できました。しかし、基礎系の講座ではアルバイトの斡旋はあまり期待できないと思いますので、自分で探す必要があります。また、入学時に「週○日くらいしか研究できない」と宣言しておくと、後々調整がしやすいかもしれません。結局、あとから毎日通うことになるかもしれませんが…。

色々と大変な面もありますが、院生の講義は非常に勉強になり、最新の基礎や臨床の知識に触れることができます。また、教授の話や考え方に大きな影響を受けました。一人の医師として、こういう道もあるのだと人生勉強になりました。また、同じ講座の先生方には論文作成で大変お世話になり、感謝しています。実験は辛いこともありましたが、臨床とは違った面白さがありました。

特に、専門医を取れた頃は臨床面で行き詰まりを感じることもあるかもしれません。頑張りすぎて失敗することもあるでしょう。私が医学生の頃、NEJMに論文を出した某先生にインタビューに行ったことがありました。その先生は「臨床ばかりしていると燃え尽きるから、必ず大学院に行きなさい」とおっしゃっていました。その言葉が頭に残り、ずっと大学院に行く機会を私はうかがっていました。結局、よく燃え尽きてますが(笑)。

結論として、学位は「足の裏の米粒」どころではない価値があると思います。最近、学位は不要だと言われることもありますが、ぜひ取得を目指してほしいです。

TOPページに戻る | 目次に戻る