以下の文章はあくまで総合診療医むけということをご了承ください。
顔面外傷について学ぶためには、以下の本が非常に役立ちます。ぜひ一度通読をお勧めします。
そのうえで私が特にお伝えしたいポイントは次の通りです。
自分で対応できそうかということですが、三次救急レベルのものを総合診療医が扱うのは無理な話だと思います。素早く見極めて、無理そうなら早く転院搬送しましょう。
その上で、縫える創と縫えない創の違いですが、ほとんどすべての創は縫った方がいいと考えています。テープ固定はやはり傷跡が残りやすいとされています。縫う場合、細い糸で表層縫合した方がいいでしょう。6-0ナイロンなどです。縫えない創ですが、これは個人の技量もあります。私のように外科出身でなければ、やっぱり無理しない方がいいと思います。言語化するのが難しいですが。
キズパワーパッドを含む閉鎖湿潤型の創傷被覆材の使い方についてです。2-3日貼りっぱなしにする人もいますが、そのままにすると後日受診時に膿でトロトロになっていることがあります。個人的には、どんな創でも毎日の洗浄と貼り換えが必要だと思います。貼りっぱなしはやめた方がいいでしょう(タイオーバーは除く)。また、閉鎖湿潤型は縫合創には効果がありません(保険適用も切られています)。閉鎖湿潤型が一番効果を発揮するのは擦過傷のような表皮が向けた傷だと考えています。連日洗浄してもらえれば、確かにきれいに治りますね。しかし、感染した創には使用しないでください。特に猫咬傷には絶対にダメだと思っています。嫌気性菌を閉じ込めてしまうからです。まとめますと、閉鎖湿潤型を使用するなら毎日洗浄貼り換えは必須、縫った創には使わない、感染創にもダメということです。
意外と軟膏とガーゼ(モイスキンパッドのような傷にくっつかないもの)を使い、毎日洗浄するのもいいですよ。
軟膏ですが、リンデロン、アズノール、ゲンタシンはすべてワセリンに何かを加えたものです。ですので、シンプルにワセリンで十分だと思います。やけどで疼痛が強ければリンデロン、おむつかぶれや湿潤しているところにはアズノール、感染していそうならゲンタシンでしょうか。何もなければワセリンでいいです。
形成外科の本などを参考にして傷を縫う先生もいるかもしれませんが(私もそうでした)、手術の縫合と外傷処置は少し異なると考えています。きれいさを追求することは共通ですが、オペ室と同じように真皮縫合を行うと感染のリスクが高まります。真皮縫合は創部に異物を残すことになるからです。総合診療医が扱えるくらいの外傷では、シンプルに表層縫合だけで十分かなーと考えています。時間的制約もありますしね。
なお、血腫形成を防ぐためにナイロンドレナージやペンローズドレーンを残し、軽く圧迫するのもポイントです。
とても語りつくせないので、ぜひ上記の本を読んでください。