~診断は難しいが、治療法は限られている~
以下の文章は僻地研修を行う研修医向けに記載しています。皮膚科専門医向けではありませんのであしからず。
皮膚科の診断は難解で、専門的な知識が求められます。例えばダーマスコピーの使用は一般医には難しく、使ったとしても専門医レベルには達しにくいです。また~~疹、~~斑など見分けが付きにくいです。
とは言え、総合診療医が扱う皮膚科疾患の治療法は限られています。例えば、かゆみには抗ヒスタミン薬の内服やステロイド軟膏の塗布を行います。Very strongなステロイド軟膏であっても短期間なら大丈夫な印象を持っています。
注意が必要なのは、稀に皮膚癌が含まれていることです。鹿児島県は紫外線が強く、無症候性で難治性の皮疹が皮膚癌だったことが時折見られました。治りが悪い場合は、早めに皮膚科を紹介することを推奨します。
痛い皮疹の多くは帯状疱疹です。片側性であれば帯状疱疹を疑い、デルマクイックVZVで検査して、アメナリーフを処方します。腎機能を考慮する必要がなく、7日間の服用で治療が完了します。これを処方しだしてから、治療に難渋することがなくなりなりました。同時にビダラビン軟膏やプレガバリンも処方しておきましょう。なんとなくですが、アメナリーフの方がアシクロビルより帯状疱疹後神経痛になりにくい気がします。
顔面帯状疱疹は注意が必要で、鼻頭にかかっている場合は、眼球への進展を考慮します。教科書では失明のリスクが強調されていますので、自分が勤務する地域の眼科の先生にすぐ送るべきかどうかあらかじめ確認しておいた方がいいでしょう。治療には眼軟膏と皮膚用軟膏の両方が必要です。「目の周り」であっても眼軟膏を処方した方がいいらしいです。目に入る可能性があるからです。
私は積極的にデルマクイックVZVを使用していました。本当に陽性なら数分で結果が出ます。便利なのでぜひ使いましょう。コツはしつこいくらいに皮疹を綿棒でこすることです。優しくやると偽陰性になります。神経ブロックを希望する患者には、麻酔科へのコンサルテーションを依頼します。
おむつかぶれなどで治りにくい皮疹がありますよね。亜鉛欠乏が多いため、亜鉛華軟膏とアズノールを使用し、必要に応じてプロマックを内服させます。日光が当たる場所では前述の通り皮膚癌を考慮します。
火焔状の腫瘍の多くは尋常性疣贅であり、切除が可能です。E入りキシロカインで局麻し、切除するといいと思います。シェーブ法が良いと思いますが、適切な深さで切除することが必要です。私はどんな皮膚腫瘍でも切除後は必ず病理検査に提出していました。癌の見落としをしたくないからです。
種子島は温暖なため虫が結構多いです。そのため、虫刺傷は頻繁に来院します。皮膚科疾患の3割くらいを占める印象です。かゆい程度だとリンデロンVG(+抗ヒスタミン薬)だけでいいです。蜂の場合はアナフィラキシーになっていないか判断が必要でして、呼吸音の聴診と消化器症状の有無を聞いておきましょう。その上でリンデロンVGと抗ヒスタミン薬を処方していました。ムカデ咬傷ですが、毒は熱で失活するため、やけどしない位の熱いお湯で当該部位を温めた方がいいです。その上でリンデロンVG、抗ヒスタミン薬内服、破傷風トキソイド筋注をしていました。数日前からの発症で感染してそうな時はAMPC/CVAなどを処方しておきましょう。
スズメバチに刺されるとかなり痛いようです。苦悶様表情で大体来院します。治療の基本は上記の通りなのですが、疼痛があまりに強い時はキシロカインで局麻してあげるとあっという間に痛みがなくなりますからおすすめです。1~2ccほどで十分です。保険が通るかは不明ですが、患者さんからはかなり感謝されますよ。
皮下異物の除去にはエコーが有用です。必要に応じて透視を用います。摘出には時間がかかるため、外来の合間に行うのは避けた方が良いです。摘出には「お役立ちグッズ」に記載してある拡大鏡が有用です。長いとげはメスで皮膚を切開して摘出することをお勧めします。摘出したら軽く縫っておきましょう。
そもそも褥瘡が出来る人は栄養状態不良の人がほとんどです。全身状態を改善しないと褥瘡は治らないということを肝に銘じましょう。そのためには栄養や電解質異常、血糖コントロール、循環などを改善します。
VAC療法も有効だと思いますが、高価なのと絶対に治るわけではないという印象を持っています。やはり全身状態が悪いと難しいでしょう。
褥瘡が感染している場合は、積極的に外科的切除を行いましょう。特に黒くなっていたり、膿が溜まっているときは一刻も早く開窓デブリしましょう。褥瘡のステージに応じて、イソジン含有の軟膏やゲーベンクリーム、アズノールなどを使用します。この辺りは成書をご覧ください。なお、創傷被覆材は2週間縛りがありまして結構使いにくかったです。軟膏+くっつかないガーゼ(モイスキンパッドなど)が王道なのかなと考えています。
大体感染して真っ赤になって痛くて眠れないと言って受診する印象です。これを感染性粉瘤と言います。粉瘤は本来感染していない小さな状態でまるごと摘出するのがベストなのですが、皮膚科へのアクセスが限られているへき地では感染してから病院に来る人が多かったです。
YouTubeや皮膚科の先生のHP、また良書では、デルマパンチで穴を開けて、その小さな穴から袋を摘出するスマートな方法が散見されます。これをくりぬき法と言います。ただこれは感染してない状況でして、感染している粉瘤では袋が周囲組織と癒着しておりきれいに取るのは結構難しいです(私のテク不足もあり)。感染しているときは切開排膿と抗生剤投与を行って感染を落ち着かせるのが先決と考えています。無理やり摘出したことも何度かあるのですが、後日創が離開してしまい長期間開放創での管理が必要になる印象です。
まとめますと、感染していなければ紡錘型またはデルマパンチで切開しエンブロックでの摘出、感染していたら切開排膿+抗生剤投与がベストかと考えます。
感染予防にはゲンタシン軟膏、乾燥している場合はヒルドイド(泡タイプ)、やけどにはプロペトやリンデロンを使用します。軟膏系はワセリンを基材として、これに薬剤を混ぜたものが多く、成分を考慮しながら処方すると効果的です。