耳鼻科 ~気道緊急の有無が最重要~

はじめに

私は麻酔科出身のため、耳鼻科疾患というと「気道緊急」が非常に怖いという印象があります。よく言われるABC(Airway, Breathing, Circulation)の中でも、BやCは数時間は持つかもしれませんが、A(気道)の異常は数分で致死的になります。気道系の問題は非常に危険だという認識を持つことが大事です。例えば、咽頭痛を訴える発熱外来の患者には、急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍が隠れていることがあるため注意が必要です。診断には、それぞれ経鼻ファイバーや造影CTが有用です。

副鼻腔炎

鼻水の症状が強い発熱患者の中には副鼻腔炎が隠れていることがあります。副鼻腔の痛みがないか問診することが重要です。疑わしい場合はCTで確認します。副鼻腔が詰まっている場合、ジェニナック2錠を1日1回7日間、ムコダイン、抗ヒスタミン薬、アラミスト点鼻薬などを処方します。

ちなみに、風邪症候群とは、鼻水・咳・咽頭痛の3つの症状が揃った病態を指します。鼻水が主症状の場合は副鼻腔炎を、咳が主症状の場合は肺炎を、咽頭が主症状の場合は溶連菌を除外することが必要です。

めまい

めまいの診察には、指鼻試験、パピプペポの発語、神経診察、頭部CT、心電図、採血(電解質、貧血チェック)が必要です。初発の患者には、ルートを確保し、プリンペランIV、メイロン20ml IVまで対応します。エプリー法は千葉大学のYouTube参照ですが、私は時間がかかるため行っていません。検査結果に異常がなく、症状が改善していればメリスロンやアデホス顆粒を処方して帰すことが多いです。脱水が原因の場合が多いため、リンゲル液500mlを投与しておきましょう。

採血は必須です。以前、ふらするめまいを主訴とする患者で、高カリウム血症やHb 6台の貧血の方がいました。しっかりと検査を行うべきです。また、嘔吐が頻回であったり、症状が改善しない場合は、小脳梗塞を疑い、高次医療機関でMRIを撮ることが望ましいです。小脳梗塞はCTでは除外できないと思っています。これまで3例ほどしか小脳梗塞を見たことがありませんが、どれもプリンペランで改善しないほど強烈な吐き気を伴っていました。

めまいの鑑別は教科書に多く記載されていますが、ざっくりと「耳か小脳か」で考えています。それ以上は耳鼻科領域かと思います。

耳内異物(虫の場合)

まず、虫を殺すことが重要です。私はアル綿を絞ってアルコールを外耳道に入れましたが、色んな方法があるようです。その後、耳鏡を使って摘出します。20mlのシリンジにサーフロの外筒をつけて、奥から洗い流す方法もあります。最後にクラビット点耳薬を処方します。

耳垢塞栓

耳垢塞栓は特に耳が遠いお年寄りに多く見られます。耳鼻科外来のちゃんとした耳鏡を使い、耳鼻科用の鑷子で取るのがやりやすいです。また、耳鼻科外来の細い吸引で吸い取ることもできますが、これは大まかに取ってから行います。ゴリゴリやりすぎると外耳道から出血するので注意が必要です。出血した場合は、ゲンタシン軟膏を塗布します。耳垢水を使って耳垢をふやかしてから取ることも可能です。

耳前の処置は要注意

耳前には顔面神経が走っているため、不用意に切り込むと不可逆性の顔面神経麻痺を引き起こす可能性があります。このあたりの裂創処置や腫瘍切除は慎重に行う必要があります。

鼻や耳、口唇の裂創

裂創の処置では、縫合線が合わないと後々目立ってしまいます(特に口唇)。大事な線をまず合わせてから、周囲を縫合することが重要です。この最初に縫う部分をKey sutureと言います。

頬の貫通外傷

表面は縫合しますが、口腔内の粘膜は縫合の必要はないとされています。

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