この疾患の問題点は、爪が厚くなると疼痛を引き起こし、歩くのがつらくなるということです。ウォーキングはしたいけれど、足が痛くてできないという人は結構います。
基本的な爪の手入れは「短く、薄く」です。爪甲鉤彎症で爪は二段構造になっており、大部分爪床に付着していないので、付着していない部分を除去します。
私はペンチ式の爪切りを使用していましたが、その強力な切断力から爪が飛び散るため、アイガードと帽子の着用が必須です。過去にはグラインダーを使ったこともありますが、時間がかかることや粉が飛ぶため使用しなくなりました。最後にやすりで仕上げるのですが、やすりかけは看護師さんにお願いしていました。
白癬の合併が疑われる場合は鏡検を行い、ネイリン12週間を処方します。
現在は軟膏の時代ではなく、治療の主体は内服です。軟膏は三か月連用してようやく効果が現れるかどうかです。
ラミシールの内服は4~6か月必要ですが、ネイリンは12週間で終了します。また、ネイリンだと併用禁忌が無いので、気軽に処方できます。
ネイリンのデメリットとしてはコストが高いことです(3割負担で2万円)。
様々な治療法が研究されていますが、決定的なものはまだ開発途上と考えています。個人的には簡便な柵状切除を多数施行していました。再発率は20-30%とされていますが、再発した場合は再度切除するという方針で問題ないでしょう。また、そもそもあまり再発しないという意見もあります。
柵状切除後に爪の根本を硝酸銀で焼く治療もありますが、硝酸銀の入手が必要であり、離島僻地のような施設では症例数が少ないためコスパが悪いです。
また、柵状切除後にモノポーラーやバイポーラーで爪母を焼灼する方法もありますが、治癒に時間がかかる印象でお勧めしません。
なので、僻地で非専門家がやる現実的な方法としては、単純な柵状切除が最も効果的と考えています。圧迫が取れるので、疼痛はすぐに改善します。1400点の保険点数が設定されています(K091 陥入爪手術 簡単なもの)。手技前には、サンダルで来院するように伝えておきます。1%Xで指ブロックを施し、麻酔が効いてから手技に入ります。イソジン消毒をし、覆布をかけて開始します。ターニケットはやっていませんでした。爪の端から2mmほどのところを剪刀で切っていき、奥まで行ったらペアンで引き抜きます。「外科剪刀 片尖 曲」というのが結構使いやすいです。爪と皮膚の間に剪刀を入れるので、通常出血はわずか~ほぼなしです。ペアンで引き抜いたら確実に爪の根元まで除去されていることを確認します。出血がひどい場合は圧迫止血後に念のためカルトスタットを詰め込みます。翌日に検創を行います。
左図:爪、右図:柵状切除を赤で示します。黄色の場所に爪が残りやすいので注意。爪が残ると意味がないです。
各種ワイヤーやつけ爪など非観血的な方法がありますが、靴のサイズ調整など生活習慣の改善を行わないといずれ再発してしまうようです。田舎だとしっかりした靴屋が無いことが多いので、私は観血的な方法を選択してきました。